ついに癌が、患者の全身を占領した日,完全に元気を取り戻した患者は、医者に退院の許可を求めた。
「まあ,元気なんだから退院したっていいんですがね」③医者は首をひねりながら答えた。
「しかし不思議だなあ。あなたは本当ならもうとっくに④死んでなきゃ、いけないんですがねえ」
「わたしは、それほど不思議とはおもいませんね」患者は健康そうに朗らかな笑いを見せ、医者にいった。「ほら,昔バンパイヤ(吸血鬼)というのがいたでしょう。あの連中は,⑤血を吸い取られることによって永遠の生命を得たのです。わたしも、全身を癌に犯されたため、完全に癌と一体になり、もしかすると、これで永遠の生命を得たのかもしれないのです」
(注)唖然としている医者にむかって、患者はさらにいった。
「ところで、ながい間病人用の食事だったもので,腹が猛烈に減っています。いかがでしょう。この病院の患者の体内から切除した肉腫を――詰まりその,癌を,少しゆずっていただけないでしょうか?
(注) 唖然としている: あきれているようす
問1①「申し出た」のは誰か。
1)患者 2)医者 3)悪魔 4)わたし
問2 ②「死ぬのは時間の問題」とはここではどのような意味か。
1)何時死ぬかわからない 2)もうすぐ死ぬ3)死ぬ時間が問題である 4)死ぬまで時間がかかる
問3③「医者は首をひねりながら答えた」とあるが,医者の気持ちは次のどれか。
1)まだ退院するには早すぎる。
2)退院できるぐらい元気なのが不思議である。
3)本当は元気ではないので心配である。
4) 医者のいうことを聞かないので腹立たしい。
問4④「死んでなきゃ,いけない」とはここではどういう意味か。
1)死んではいけない 2)死ぬべきである。
3)死ぬわけにはいかない 4)死んでいるはずである
問5⑤「血を吸い取れること」とあるが,この患者にとって,それは何にあたるか。
1)バンパイヤになること 2)肉腫である癌に犯されること3)癌患者の生命をうること 4)病人用の食事を食べること
正解
実践練習?3(1)1 (2)2 (3)1 (4)4 (5)3
実践練習?4(1)3 (2)2 (3)2 (4)4 (5)2